葬儀での読経は故人と残された者へのメッセージ

昔のように地域の世話人や長老と呼ばれる人物がいなくなった現代では、葬儀や法事の際に僧侶にあげていただくお経についての正しい知識が継承されていないケースも見られます。葬儀における読経は誰のために行うのかという基本的なことについて誤解をしていることがあります。若い人ほど葬儀でのお経は亡くなった故人をしのんで弔うためにあげるものだと思いがちですが、それだけではありません。

お経は釈迦が目の前で生きて修行を積んでいる弟子に口伝で伝えた教えを教典にしたものです。換言すれば、お経はまだ生きている人々が果たすべき人生の大事を考え、悩みや苦しみを乗り越えていこうという深い人生訓を伝えているのです。決して故人のためだけでなく、残された遺族へのメッセージでもあります。

最近は、葬儀での読経にお金をかけすぎるのではないかと考える若年層と、お布施の気持ちだからこそそれなりの金額をそろえるべきだとする高齢者の間に微妙な乖離が生じることも起きてきました。だからこそ読経の意味や価値をしっかり認識する必要があります。

最近ロボットの僧侶が登場して話題になりました。音声は人間に似ていても、ロボットのお経では人の心は癒されないし、故人の供養にもならないという声もあるようです。ライフスタイルの多様化や、死生観の変化に伴って、葬儀のあり方も多種多様になっていますが、普段あまり考えることがないお経の歴史的背景や意味合いについて洞察することは、豊かな人生を送る精神的バックボーンになります。